ピロリ菌は正式名称を「ヘリコバクター・ピロリ」といいます。大きさ4/1000ミリ程度のらせん状の細菌で、鞭毛（べんもう）と呼ばれる突起をヘリコプターのように動かせて胃の粘膜に棲みつくと考えられています。胃には強い酸（胃酸）があるため、通常、細菌は生息できませんが、ピロリ菌はウレアーゼという酵素を分泌し、周囲にアルカリ性のアンモニアを作り出すことで胃酸を中和して生存しています。

胃酸の分泌が弱い5歳以下の幼児期に感染する可能性が高く、ピロリ菌を持っている親や家族から食べ物の口移しや食器の共有などによって感染することが多いとされています。また、ピロリ菌は胃の粘膜のほか、土や水にも生息しており、上下水道が十分整備されていなかった時代に幼少期を過ごされた方に感染率が高い傾向があります。日本人の世代別感染率は、60～70歳では60％程度と高いものの、50代の人では40％程度、10～20代では10％前後と低いことがわかっています。

ピロリ菌は、一度感染すると除菌しない限り胃の中に棲みつづけます。感染していても自覚症状のないケースもありますが、多くの場合、胃に炎症を起こし、胃炎や消化性潰瘍を発症します。また、胃粘膜の萎縮（粘膜が薄くなる）が進むことで胃がんの発生リスクが高まると考えられています。その他に、胃の悪性リンパ腫や特発性血小板減少性紫斑病などの原因にもなります。

ピロリ菌の除菌治療によって、これらの症状やリスクを防ぐとともに、子供さんやお孫さんへの感染予防が可能となります。慢性的な胃炎や胃潰瘍を繰り返すなどの症状がある方や、ご家族に胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がんを発症された方がいる場合は、ピロリ菌の感染が疑われることがあります。さらに、ピロリ菌感染の多くが慢性的に持続し、胃粘膜の萎縮が持続することにより胃がんが発生するため、できるだけ早い時期の除菌療法が望まれます。ぜひ一度、ご相談ください。